この記事でわかること
- 遺言の作成方法、効力といった基礎知識
- どんな場合に遺言書を作成すべきか
- いつ遺言書を作成すべきか
遺言を知らないという方はいらっしゃらないと思いますが、遺言書の作成方法や、故人の作成した遺言を見つけた時の対応方法などについては、詳しくわからないという方がほとんどではないでしょうか。
今回は、遺言の基礎知識につてわかりやすく解説していきます。
遺言とは?
遺言とは、故人(被相続人)の最終的な意思表示です。
そして遺言を書面にしたものが遺言書です。
一般的には「ゆいごん」と読まれることが多いですが、法律用語としては「いごん」と読みますので、専門家は「いごん」と言うことが多いです。
遺言書には財産の分け方が記載され、基本的にその通りの分け方で財産を分けることになりますので、相続人同士が財産の分け方で揉めてしまうといった事態を防ぐ効果があります。
また、相続財産の種類や所在が遺言書によって明らかになりますので、遺言書を作成することによって、相続財産の名義変更などの手続きや相続税の申告をスムーズに行いやすくなります。
遺言書を作成した方が良い場合
遺言書は必ず作成しなければならないというものではありませんが、遺言書を作成しておいた方が良い場合というのも存在します。
どのような場合か解説していきます。
兄弟姉妹の相続になる場合
子供がいない夫婦で、両親がすでに亡くなっている場合は、配偶者と兄弟姉妹が法定相続人になります。
したがって、遺言書を作成していない場合、配偶者と兄弟姉妹が財産の分け方を話し合って決めなければならないですし、預金の解約や不動産の名義変更といった手続きも配偶者と兄弟姉妹が協力して進めていく必要があります。
普段から交流のあるご関係性であれば問題にならないかもしれませんが、そうでなければ残された配偶者の負担は少なくないはずです。
兄弟姉妹には遺留分(遺言によっても侵害できない相続人の取り分)がありませんので、例えば全ての財産を配偶者に相続させるという内容の遺言書を作成しておくことでこのような負担を回避することができます。
内縁関係の配偶者など相続人以外に財産を渡したい場合
内縁関係の配偶者は法定相続人にはなりませんので、通常であれば財産を相続することができません。しかし、内縁関係の配偶者に財産を渡すという内容の遺言書を作成することによって、財産を渡すことができます。
このように遺言書によれば、法定相続人以外の方に財産を渡すことが出来るため、内縁関係の配偶者に限らず、生前にお世話になった方など法定相続人以外の方に財産を渡したい場合は、遺言書の作成が有効です。
相続人がいない場合
配偶者や子、両親、兄弟姉妹など、民法で定められた相続人が存在しない場合、財産は国に帰属することになります。
国に帰属してしまうくらいなら、生前にお世話になった方に渡したり、公益団体などに寄付したいと考える方もいらっしゃると思います。
このような場合も遺言書の作成が有効です。
遺産分割で相続人同士が揉めてしまう恐れがある場合
相続人同士が不仲であったり、相続人の数が多かったりする場合は遺産分割協議が紛糾し、時間と労力を費やすことになってしまう可能性があります。最悪の場合裁判にまで発展してしまうケースもあります。
このような場合にも遺言書を作成すると良いでしょう。
遺言の効力とは?
遺言は、遺言者の最終意思の表示ですので、最大限に尊重されるべきものです。
したがって、正しく作成された遺言書には法的な効力が認められているのです。
遺言書に法的な効力を持たせられる事項は民法に定められており、
例えば次のような事項です。
・誰がどの財産をどれだけ相続するかなどの財産の分け方の指定
・虐待や非行を行った相続人の廃除
・遺言執行者の指定
遺言書の種類
遺言書には自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類があり、それぞれに特徴がありますので、それらを把握し、ご自身にとって適切な遺言書を選択することが大切です。
公正証書遺言
公正証書遺言は、遺言書を公証人に作成・保管してもらう方法です。公証人は元裁判官や検察官などの法律実務に精通した方々ですので、内容の不備等によって遺言書が無効になるリスクを心配する必要がありません。
また、作成した遺言書は公証役場にて保管されますので、紛失や改ざんの心配も不要です。
財産の規模や遺言の内容に応じて公証人に支払う手数料が発生しますが、通常数万円から十数万円程度です。
費用は発生してしまいますが、遺言書の作成は確実性がなによりも大事だと思いますので、公正証書遺言が最もおすすめの方法です。
自筆証書遺言
自筆証書遺言は、文字通り自分で紙に書いて作成する方法です。費用がかからず思い立った時に作成することができますので、最も簡単な方法と言えます。
また、相続人にも専門家にも遺言の存在を伝えずに自分だけで作成保管を行うことができます。
ただし、法律に定められた書き方に従っていない場合に遺言書が無効になってしまうリスクがあります。さらには開封時には家庭裁判所にて検認を受ける必要がありますので、残された相続人には負担の大きい方法です。
近年では財産目録など遺言書の一部をパソコンで作成することが認められるように作成ルールの緩和がされたり、作成した遺言書を法務局に預けることが出来る保管制度が開始したりと、以前に比べれば自筆証書遺言も多少利用しやすくはなってきています。
秘密証書遺言
秘密証書遺言は、遺言の内容を秘密にしたまま、公証人に遺言者本人が作成した遺言書であることを証明してもらう方法です。
公正証書遺言とは違って、公証人は内容の確認や作成を行いませんので、あくまで作成は遺言者本人が行うことになります。したがって、自筆証書遺言の場合と同様に内容の不備により遺言書が無効になってしまうリスクがあります。
遺留分とは?
遺言書を作成するうえで重要な論点として遺留分というものがあります。
遺留分とは、法定相続人に認められている最低限の財産の取り分のことです。
そして大事な事は、遺言であってもこの遺留分を奪うことはできないということです。
遺留分を無視した遺言書を作成してしまうこと自体は可能です。
ただし、遺留分を侵害された相続人は侵害された遺留分を取り戻す請求が出来るのです。
遺留分をあえて無視した遺言書を作成することは可能ですが、その内容に納得しない場合は相続人間でトラブルに発展する可能性が高いです。
したがって、基本的には遺留分を侵害しないような分け方にするべきであり、事情があってあえて遺留分を無視した分け方にする場合でもトラブルのリスクは想定しておく必要があります。
遺言書を見つけた時の対応
相続発生後、遺言書が見つかったらすみやかに家庭裁判所に連絡し、検認を受けましょう。民法にも検認の義務は規定されていますし、検認を受けた遺言書でなければ、不動産の相続登記や預金の名義変更を行うことができません。
封印のある遺言書の場合は、開封せずにそのまま家庭裁判所に提出します。
なお、公正証書遺言の場合には検認不要です。
いつ遺言書を作成するべきか
認知症になってしまうと基本的に遺言書は作れなくなってしまいます。
自分がいつ認知症になるかは分からないと思いますので、出来るだけ早めに遺言書を作成するのが良いでしょう。なお、遺言書は作成後に気が変わったり、財産の内容に変更が生じた時に何度でも書き直しができます。そういう意味でも早めに作成してしまった方が良いでしょう。
まとめ
今回は、遺言の基礎知識について解説いたしました。
遺言書の相談は司法書士、弁護士などに依頼することも可能ですが、相続税が発生する方の遺言書作成は税理士に相談すべきです。
なぜなら相続税は財産の分け方によってその税額が変動する場合があるため、無駄に税金を増やさないためにも、税額への影響を加味しながら分け方を決めていくことが重要だからです。
その他にも遺言書の作成を相続専門の税理士に依頼することには多くのメリットがあります。
当事務所は相続専門の税理士事務所です。
遺言書の作成のご相談も承っておりますので、まずはお気軽に初回無料相談にお問い合わせください。
無料相談を実施しています
お気軽にご連絡ください
TEL:0120-93-8899
(平日・土曜9:00~18:00)
※営業のお電話は固くお断りします。