ペーパレス化はテレワーク導入のための必須条件といっても良いのではないでしょう。
もともとペーパレスを実現していた会社はこのコロナ禍においてもテレワーク化を不自由なく実行できたことでしょう。
ただ、税務は未だに紙が主流ですので、ペーパレスでの業務が行えず、テレワーク化が進んでいないのが現実でしょう。
そこで今回は相続税申告の必要書類のスキャンの方法を考えてみます。
なお、スキャンによるデータ化はテレワークだけではなく、AIの導入などによる業務効率化のための前提条件でもあります。
なぜ税務においてペーパレス化が難しいのか
近年、電子での申告書や添付書類の提出が可能な範囲が徐々に広がってきています。
そのため、一昔前とは異なり、税務においても完全ペーパレスで業務を行うことは不可能ではありません。
ただし、税務においてはやはり、元データが紙であることが多いのです。
例えば、相続税申告業務の場合、
まずは相続人確定、財産評価の根拠となる必要書類を入手します。
戸籍謄本、固定資産税課税明細書、名寄帳、預金通帳、領収書、などなど
これら必要書類をデータで入手ができれば、
あとは手書きで行っていた作業をPDF編集ソフトなどで行えうことができれば、
ペーパレスで申告まで行うことが可能になります。
しかしこれらの書類をイメージいただければわかるように、
まだまだ紙でしか入手できないものが多いのです。
したがって、ペーパレス化を行うためには、まずスキャナーなどでのデータ化が必要になります。
ただし、同じサイズの資料で、かつホチキスなどで閉じられていない紙のスキャンであれば、
複合機などで一度に大量に行えますが、
戸籍謄本、預金通帳は閉じられていますので、1ページずつ開く必要があります。
また、固定資産税課税明細書や領収書は変則的なサイズなので、
一度に読み込むことは難しいです。
さらには、お客様に返却が必要な書類も多いので、
破れや、折れといった破損にも注意しなければなりません。
このように税務においては扱う書類が紙媒体でしか入手できないものが多く、
かつスキャン作業も単純ではないということが、
ペーパレス化の障害になってるのです。
必要書類の効率的なデータ化の方法は?
税務申告の必要書類を効率的にデータ化する方法を考えてみます。
複合機を使う
税務は紙社会であるため、
コピーやプリントアウトのために、
大型の複合機が設置されている場合が多いのではないでしょうか。
追加の導入コストがかからないため、
既存の複合機を使ってスキャンを行っている事務所が多いのでないでしょうか。
大量の書類を一度に流すことも可能ですし、
読み取りスピードも早いです。
また、原稿台が広いので、どんなサイズの書類でもスキャンが可能です。
なお、図面など縮尺を精確に維持する必要がある書類いついては、
原稿台に置いて、歪みなどが出ないように上部カバーで押さえる必要があるため、
図面のために専用のスキャナーを導入しない限りは、
実質的に複合機が唯一のデータ化の方法かもしれません。
デメリットとしては、
一度に流せない書類は1枚1枚、
上部カバーを持ち上げて、原稿台に並べて、読み取りを待つ、
といった作業が必要になり、どうしても時間がかかってしまいます。
ひとつの案件の書類を全て完了するまでに、
数時間かかってしまうということもあるでしょう。
その間、複合機を占領してしまいますし、
複合機の設置方法にもよりますが、
基本的には立ちっぱなしの作業ですし、
上部カバーの上げ下げも地味に体力を奪われるものです。
また、基本的には社内LANを通じて、サーバ等に保存し、
自分のPCで仕上がり確認することになります。
その場で確認できない点もデメリットと言えるでしょう。
卓上スキャナを使う
機能としては複合機の下位互換と言わざるを得ません。
一度に流せる枚数、読み取り速度、扱える書類の種類などは複合機と比べると劣ります。
卓上で作業を行えることや複合機と比べて安価といったところがメリットとなります。
また、PCに繋ぎ、随時仕上がりを見ながら作業をすることも可能です。
canonのスキャンスナップシリーズが有名です。
・スタンダードなのはix1500
扱えるサイズがA4まで、
かつ巻き込みながら読み取るタイプであるため、
書類を痛めてしまうリスクがあります。
・モバイル利用が可能なix100
外出先で数枚をスキャンする際には便利だと思います。
・SV600
A3までの読み取りが可能。
頭上から撮影をする仕組みであるため、
書類との接触がなく、破損のリスクが少ないです。
スマホのアプリを使う
税務の必要書類のデータ化において特徴的な点は、
品質がそれほど求められない点でしょう。
写真などのデータ化は解像度や色合いなどが重要でしょうし、
しかし、税務においてそれほど気にする必要はありません。
極端な話、数字など必要な情報だけ読み取れれば十分なのです。
スマホのアプリは当然スマホのカメラを使用しますが、
意外とカメラで書類を撮影するのは難しいです。
歪みや余白、ピンボケなど当たり前ですが、
必要な情報さえ撮れていればそれほど気にする必要は無いでしょう。
アプリに自動補正機能もありますので、ある程度は整えてくれます。
スマホのアプリはいくつかありますが、
私が使っているのはOfficeのLensです。
無料アプリですが、商用利用の場合はライセンス料が発生します。
当然一度に流すといったことは出来ませんが、
カメラを向けてシャッターを押すだけですので、
読み取り時間は一瞬です。
もちろんその場で仕上がりを確認することが可能です。
データ化の手法ごとの比較
データ化の手法ごとの得意不得意を整理すると、以下の表のとおりです。
読み取り時間 | 仕上がり | コスト | 非破壊 | 扱える書類の種類 | |
複合機 | △ 一度に流せる書類○ | 〇 | × | △ | 〇 |
卓上スキャナ | △ | 〇 | △ | × 非接触タイプは〇 | × |
スマホのアプリ | 〇 | × | 〇 | 〇 | △ |
まとめ
税務の必要書類の効率的なデータ化という視点に立てば、
優先すべきは、読み取り時間と言えるでしょう。
逆に税務においては、それほど仕上がりを気にする必要は無いですし、
扱う書類の量も多いので、導入コストも短期で回収が見込めます。
税務を行っている事務所の場合、
複合機は既に導入されていることが多いでしょう。
また、手法ごとにデータの取り込み方、整理の仕方が異なりますし、
作業前の準備もそれぞれにありますので、
資料の種類ごとに複合機と卓上スキャナを使い分かるといったこと自体は、
非効率が生じてしまいますので、
少ない量の場合は、複合機のみで完結するのが一番でしょう。
ただ、一度にまとまった量の資料をお客様からお預かりすることが多いと思います。
その場合、一度に流せるものは複合機でスキャンし、
1枚1枚スキャンする必要がある書類については、
スピードで勝るスマホのアプリを使うと効率化が可能です。
複合機において発生する上部カバーの上げ下げ、読み取り時間は、
1枚当たり数秒ですが、何十枚、何百枚とスキャンを行う場合は、
数十分、数時間の差になります。
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