被相続人が亡くなり、その遺産の分割について、相談して分けることになった場合、「遺産分割協議」を行う必要があります。遺産分割協議の結果を残した書類を「遺産分割協議書」といいます。
遺産分割協議の手順や必要な知識について詳しく解説していきます。

遺産分割協議とは

被相続人が亡くなると、遺言書がない場合、相続人全員で遺産分割の詳細を話し合いすることになります。これを「遺産分割協議」と言います。民法に目安としての相続分の割合が規定されていますが、あくまで目安ですので、相続人全員で協議をして相続分の割合を決める必要があります。
遺産分割協議は相続人全員が合意しなければ成立しません。したがって、相続人に、未成年者や認知症などで意思表示が困難な人、行方不明の人がいる場合は、その代理人の参加も必要になります。遺産分割を相続人が1人でも欠けた状態で行うと、その協議結果は無効となります。また後で問題が起こらないよう、協議の結果は書類に残します。この書類のことを「遺産分割協議書」といいます。

遺産分割協議の期限について

遺産分割協議は、いつまでにやらなければいけないというような期限はありません。
しかし、相続税に関しては、協議が確定していなければ受けることのできない軽減措置があり、申告期限内(相続開始後10ヶ月内)に協議が整わないと、このような相続税の軽減措置が受けられなくなる場合があります。
そのため、現実的には、「相続開始後10か月以内」に成立させることをお勧めします。なお、不動産の名義変更や金融資産の名義変更を行う際にも、その財産についての協議が確定している必要があります。

遺産分割協議の進め方について

一般的に、被相続人の葬儀が終わって落ち着いた頃から遺産相続の準備を始めます。四十九日法要が終わった頃が目安となります。遺産分割協議をスムーズに進めるためには以下のとおり進めると良いでしょう。

  1. 誰が相続人であるかを確定する
  2. 相続財産を確定する
  3. 相続分について具体的に話し合い、誰が何を相続するかを決定する
  4. 協議の内容を遺産分割協議書に記載をする
  5. 話し合いがすすまない場合には調停・審判を利用する

それぞれ具体的に見ていきましょう。

誰が相続人なのかを確定する

遺産分割協議を始める前には必ず、「誰が相続人であるか」を調査し、確定させる必要があります。遺言書がない場合には、民法のルールによって相続人となる人を判断します。民法のルールによって相続人となる人のことを法定相続人と呼びますが、法定相続人となる人は次の図の優先順位で決まります。

また、相続人には、認知している非嫡出子や養子、疎遠になっている兄弟姉妹がなる場合もあります。被相続人が過去に離婚している場合、被相続人と元配偶者との間に生まれた子も相続人です。
後から新たな相続人が登場すると、遺産分割協議がやり直しになります。
まず被相続人の「生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本」を集めて、漏れのないように調査し、確定することが重要です。

相続財産を確定する

新たに相続人が発覚した場合とは異なり、遺産分割協議後に新たな遺産が発覚したとしても、基本的には遺産分割協議そのものは無効になりません。
しかし、新たに発覚した遺産について、改めて遺産分割協議をする必要が出てきます。
遠方に住んでいるなどで、何度も話し合いをすることが難しい場合もありますし、そもそも、新たに遺産が発覚したことで、すでに行った遺産分割協議の内容を修正したいといったこともあると思います。
したがって、最初にすべての相続財産を調査したうえで遺産分割協議に入ること重要です。
また、「プラスの遺産」だけではなく、借金やローンなどの「マイナスの遺産」もありますので、入念な調査が必要です。

相続分について具体的に話し合い、誰が何を相続するかを決定する

民法では、遺言書がない場合に、相続する割合の目安を定めています。これを法定相続分といいました。 遺産分割協議は、この法定相続分を目安にするのが一般的ですが、法定相続分は身分関係をもとに割合を定めただけで、個別の事情は一切考慮されていません。被相続人に対する介護等の生前の貢献や生前贈与などの有無によっては、不公平と考えられるケースも出てきます。 このような場合には、具体的事情を考慮して相続分を決めると良いでしょう。

また、現金・預貯金以外にも遺産がある場合、相続分が決まったとしても、だれがどの遺産を取得するかまでは自動的に決まりませんので、どの遺産を誰が相続するかについて話し合いをする必要があります。

寄与分とは

遺産分割協議で知っておきたい知識の一つが、相続人の「寄与分」です。
被相続人の財産の維持または増加に特別の貢献をした人がいる場合、他の相続人との公平を図るために、その増加をさせた相続人等に対して、相続分以上の財産を取得させる制度です。
例えば、被相続人の事業への協力や、療養看護などを通して被相続人の財産の維持または増加に貢献をした人は、法定相続分に上乗せして財産を取得できることが民法で定められています。この上乗せされる財産が「寄与分」です。

【寄与分が認められるケース】

寄与分が認められるケースは以下のような場合です。

・家業を無償で手伝っていた
・被相続人がケガ病気をした時に無償で看病していた
・借金の肩代わりや財産の提供をしていた など

ただし、扶養義務の範囲内の行為と見なされれば寄与分は認められませんので注意が必要です。

特別受益とは

遺産分割協議で知っておきたい知識のもう一つとして、「特別受益」があります。
特別受益とは一部の相続人だけが被相続人から生前贈与や遺贈、死因贈与で受け取った利益のことです。複数の相続人がいるケースで生じます。 相続人の誰かだけが故人の生前に財産をもらっているのに、これを無視して遺産分割を行うと他の相続人が不公平だと感じトラブルになることがあるため、受け取った利益が特別受益に該当するのであれば、相続分からはその額を差し引いて計算します。

【特別受益にあたるケース】

特別受益に該当するかどうかは、総合的に判断する必要がありますので、一概には言えませんが、以下のようなケースは特別受益に該当する可能性があります。

・家を建ててもらった(住宅取得資金を出してもらった)
・独立開業の際に資金を出してもらった
・結婚の際に、持参金や支度金を出してもらった

配偶者がいる場合の法定相続分

配偶者がいる場合の法定相続分は以下の表のとおりです。
上記までのとおり、遺産分割協議を行う際はこれを目安にすることになります。

相続人の構成相続人法定相続分
・配偶者と子供の場合配偶者1/2
1/2
・配偶者と父母(祖父、祖母)の場合 配偶者 2/3
父母(祖父、祖母) 1/3
・配偶者と兄弟姉妹の場合配偶者3/4
兄弟姉妹1/4

協議の内容を遺産分割協議書に記載をする

協議の結果、相続人全員でどの遺産を誰が相続するかについて合意ができれば、合意内容をまとめた遺産分割協議書を作成します。 遺産分割協議書は、後日のトラブルを防ぐため、相続人全員が署名し、実印で押印するのが一般的です。

話し合いがすすまない場合には遺産分割調停・審判を利用

話し合いをしても合意ができない場合、家庭裁判所の遺産分割調停・審判を利用することになります。 調停は、裁判所の調停委員を介して話し合いを行う手続で、まずは調停によって合意ができないかを模索するのが一般的です。 調停でも合意ができない場合は審判に移行し、裁判所(審判官)が遺産の分け方を決めることになります。

遺産分割調停は、基本的に各相続人、裁判官、調停委員の3人で進められます。
調停委員とは、裁判所が選任する地元の有識者で、弁護士などがなることもあります。
他の相続人とは、最初と最後だけ顔を合わせることになりますが、話し合い自体は相続人同士が顔を合わせることなく進みます。

「遺産分割調停」の申立ては、管轄の家庭裁判所へ調停申立書を提出し、手数料を納付し手続きを行います。
通常は、1回の調停で終わることはなく、何回かの調停を経て解決の道を探ります。

遺産調停は、長い場合2年以上となることもありますが、調停がまとまらないという結論に達した場合は、自動的に審判手続きが開始されます。
審判では、相続人の主張立証が行われることになります。
財産の種類や各相続人の主張と根拠、事情などを確認したうえで審判が下され、それに従って遺産分割を行うことになります。

遺産分割協議後に遺言書が見つかったら

産分割協議後に遺言書が見つかった場合、原則として遺言書は法定相続分や遺産分割協議よりも優先されます。そのため、遺言書があれば基本的には「遺言書の内容に従う」ことになります。

しかし、あとから発見された遺言書の内容を確認した相続人全員が、すでに行った遺産分割協議の内容を優先させたいと考えている場合は、遺産分割をやり直す必要はありません。ただ一人でも反対する者がいれば、反対者が出てしまえば、遺産分割協議のやり直しが必要です。

そのため、遺産分割協議後に遺言書を発見したら、必ず全法定相続人への意思確認を行う必要があります。

まとめ:遺産分割協議はやり直すことのないように、はじめから慎重に進めましょう!

遺言書がない相続では、遺産分割協議が必要です。相続争いを防ぐためにも、手順や知識を意識しながら進め、しっかりと内容を話し合い、正確に遺産分割協議書をまとめることが欠かせません。
遺産相続分割協議をやり直すのは、時間と労力がかかり、相続人の間にさらに新しいトラブルを生み出す元となりえます。最初から専門家に相談しながら進めても良いでしょう。

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